周波数と出力の制御

超音波洗浄機の周波数と出力の制御

超音波洗浄機の周波数(Hz)と出力(W)の制御

超音波洗浄機の発振器から供給された電気信号は超音波を発生させる超音波振動子(投込型、振動板型、洗浄槽型等)の内部の振動素子によって振動に変換されます。


超音波発振器と振動子


振動素子は一般的に90%以上の高い変換効率を実現しています。
しかし、最適な周波数が限定される音叉のような性質があります。オーディオ機器で使用されているスピーカーのように広範囲の周波数を効率的にカバーすることは出来ません。


振動素子は音叉のような性質


このため、超音波洗浄機の発振器は正確な周波数の電気信号を供給する能力が必要となります。
最適な周波数は洗浄液の種類や液温、液深、溶存気体量などの条件で随時変化していきます。 この変化に合わせて周波数の制御(微調整)をしないと出力の低下などが発生します。
出力の変化は洗浄不良やワークダメージの発生など洗浄性に大きな影響を与える傾向があります。


制御による出力変動の違い



クオーバ、フェニックスⅢ、フェニックスハイパー、フェニックス+の発振器は自動で出力を設定値に保つ機能を標準装備しています。この機能を使用することで、常に指定した条件で洗浄を行うことが可能になります。
もしも、経年変化などで振動子が劣化して規定の周波数から外れたり、出力の制御が出来ない状態になったときは自動で発振を停止し、エラーを表示します。


PLL発振(連続発振)


工業用超音波洗浄機は通常、洗浄槽の底面から上向きに特定周波数の超音波を連続的に洗浄液へ照射します。照射された超音波は、液面で跳ね返り底面へ戻っていくので、振動エネルギーが再利用されて、効率的な超音波洗浄が可能となります。
実際に工業洗浄を行う場合は洗浄液の種類や液温変動による音速の変化や、液面の揺れによる照射距離の変化、洗浄物や洗浄槽からの反射などの影響を受けるので、単純に理論値通りの挙動にはなりません。


定在波のイメージ


これらの影響を打ち消して洗浄性に大きく影響するキャビテーションを効率的に発生させるためには周波数や出力の自動制御などの機能が必要となります。
振動素子を効率良く振動させて超音波を照射する連続波発振(PLL発振)は時間当たりのエネルギーを大きくできるメリットがあるので「しつこい」汚れの洗浄や洗浄時間の短縮に適した発振方法と言えます。

 

制御によるキャビテーション発生の違い

 

カイジョーは工業用洗浄向けに、1982年に周波数(kHz)の自動追尾機能を搭載したダイナミックシリーズを発売。1985年には周波数の自動追尾をPLL発振制御で行うオートパーサーシリーズを発売。1991年には周波数(kHz)と出力(W)を自動的に制御するPFC(Power Fix Control)回路を搭載したフェニックスシリーズを発売し、この問題の解決を図ってきました。
その後も、出力のデジタル設定・表示や、洗浄環境に合わせた最適動作を自動で設定するイニシャライズ機能を実用化。お客様の多様な洗浄条件で発生する課題を解決するために理論と実績に基づいた開発を進めています。 



 

発振モードの分類


振動素子が最も効率良く振動する1つの周波数で超音波を照射する連続波発振(PLL発振)は時間当たりのエネルギーを大きくできるので「しつこい」汚れの洗浄や洗浄時間の短縮に適した発振方法と言えます。
しかし、工業洗浄では「洗浄ムラ」と呼ばれる「汚れが落ち切らない」や、「ワークダメージが発生する」などの問題が発生する場合があります。1970年に販売を開始したサイリスタFMシリーズを皮切りに「連続発振」以外の発振方式を搭載した製品の提供と開発を続けています。
洗浄の課題を解決するために有効な「周波数」と「発振モード」の選定。そのどちらにもカイジョーはお答えします。


連続発振(PLL発振)

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単一の周波数で連続して発振するモード。時間当たりのエネルギー量を大きくできるので「しつこい」汚れの洗浄や洗浄時間の短縮に適している発振モード。
洗浄条件の変化に合わせた自動制御は必須といわれている。

FM発振(スイープ発振)

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周波数を周期的に変化させる発振モード。類似例に複数の周波数を同時に発振させたり、切り替えて発振させる発振モードがある。 定在波の影響を軽減できるのでワークダメージなどの洗浄ムラが発生したときなどに効果がある場合がる。エネルギー量が小さくなるので「しつこい」汚れの洗浄性が低下する場合がある。

ハイパー発振

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ハイパーモードと呼ばれる周波数を周期的に変化させる発振モードの発展形。高い周波数(78kHz)に特殊な変調を加えて発振させる発振モード。 定在波の影響を軽減し洗浄性の向上も図れるのでワークダメージの軽減と洗浄性の確保が必要な場合や、浸透性の向上が必要な場合などに効果が期待できる。

AM発振

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出力を周期的に変化させる発振モード。頑固な汚れを落とす場合などに効果がある場合がある。

間欠発振(ディガス)

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周期的に発振のON-OFF繰返す発振モード。発振停止中に洗浄液中に漂っている気泡が液面に上昇するので脱気をするときに効果がある場合がある。ディガスモードと呼ばれることがある。

周波数固定発振

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単一の周波数を固定して連続して発振するモード。半導体のウエハ洗浄など洗浄条件を高度に管理している場合に使用されることがある。

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