超音波とは何か
工業分野での「超音波」の定義
一般的には、「超音波とは周波数が高くて耳に聞こえない音」とされています。人間に聞こえる周波数の範囲(可聴域)は、低い音で20 Hz、高い音で20,000 Hz(20 kHz)くらいまでの間とされ、例えば時報に使われている音は約880 Hzですが、工業分野においては、2 kHzや14.5 kHzなど耳に聞こえる音も超音波として扱うため「超音波とは、聞くことを目的としない音波である」と定義しています。
超音波の性質
超音波はその伝わり方において、音や電波とは異なる性質を持っています。超音波には、空気中よりも、むしろ水や金属などの物質中で強い伝播力を発揮するという特徴があります。真空状態の中では、まったく伝わりません(本表の特性は、周波数や温度などで異なる場合があります)。
2) 超音波の伝わる速度(音速)
「音響振動」を起こすことで伝わる超音波や音と、「電磁界振動」により伝わる電波では、伝わる速度が大きく違います。たとえば、空気中での超音波や音は1秒間に約340m伝わるのに対し、電波は秒速30万kmで伝わります。つまり、電波はたった1秒で地球を7周半も進むのに対し、超音波が地球を1周するには約33時間もかかることになるのです。
3)超音波の波長
超音波は音響振動で波のように伝わりますが、その波の1周期分長さを「波長」と呼びます。周波数が低いほど波長は長く、周波数が高いほど波長は短くなるという特徴があります。
4) 超音波が伝播する方向
気体や液体の中で、超音波は「縦波(疎密)」により伝わりますが、固体中では「横波」も存在します。
5)超音波の共振
ある物体を自由に振動させたときの周波数に等しい周波数で外から力を加え、小さな力で大きな振動をさせることを「共振」と言います。 共振を活用すると、超音波機器の性能を効率よく上げることができます。
超音波応用機器の分類
上記のような超音波の特徴を活かし、これらの作用を用いた様々な超音波機器が作られています。超音波洗浄機は、超音波が金属内部や水中を伝わること、進む速度が遅いことなどの特徴を応用して作られたものですが、産業分野ばかりでなく、エコーと呼ばれる診断装置などの超音波機器は、医療の分野でも活躍しています。超音波機器は、大きく「動力的応用」と「通信的応用」に二分されますが、超音波でできることは多岐にわたり、今や超音波は「なくてはならないもの」となっています。
動力的応用
1.洗浄:金属部品、半導体、LCD、機械加工部品 など
2.分散・乳化:マヨネーズの酢や油の混合 など
3.脱泡:感光液、現像液、食品
4.振動切削:金属加工、サンドイッチ切断 など
5.溶着:100円ライターのプラスチック部、ICのリード線 など
6.治療:結石破壊、石除去、白内障 など
通信的応用
1.探知機:魚群探知機、金属探知機、非破壊検査装置 など
2.計測:風速計、流速計、波高計 など
3.診断:胎児の診断、結石破壊 など