洗浄液について
周波数以外の要素も考慮した超音波洗浄
超音波洗浄は、超音波の周波数以外に「洗浄液(洗剤)」の種類や「液温」および液中の「溶存気体量」などの要素も、その洗浄効果に影響を及ぼします。 これらの要素のバランスを上手く取ることで、最適な洗浄が可能となります。
洗浄液(洗剤)や溶剤の選び方
洗浄効果は、超音波洗浄機の性能だけでは決まりません。最適な洗浄液(洗剤)や溶剤を選ぶことで、より効率の高い洗浄が可能となります。カイジョーは、洗浄物と超音波洗浄機に対し、最適なご提案をいたします。
なお、 >【日本産業洗浄協議会】のホームページ にも洗浄剤について詳しく掲載されております。
各洗浄液(洗剤)の特徴
カイジョーの超音波洗浄機を有効にご活用いただくためのご参考として、各洗剤の特徴をまとめました。なお、「主な製品名」に記載した各会社の社名には株式会社を省略させていただいております。
各洗浄液をご使用される前に必ず最新の取扱説明書やSDS(安全データーシート)を読んで、注意事項や適用法令の内容を確認してから適切にご使用ください。
水系洗浄液
<水系洗浄液の特徴>
主な対象汚れ鉱物系加工油(51%)
水溶性加工油(23%)
粉塵・不純物(10%)
特徴水に界面活性剤などの成分を溶かした洗浄液で、液性(pH)よってアルカリ性、中性、酸性に分類されます。
出荷量の比率はアルカリ性が78%、中性22%、酸性1%です。
さまざまな特徴を持った洗浄液が市販されています。
留意点産業分野で使用する場合は、すすぎ水を含めた廃液処理、乾燥性や錆の発生に注意が必要な場合があります。
洗浄液の中に占める出荷比率27%
主な製品名大塚化学:シャダンC&S / 第一工業製薬:DKビークリヤ/ 花王:ツインクル100 / 出光興産:ダフニーWクリーナーシリーズ / ユシロ化学工業:ユシロクリーナーWシリーズ、PCWシリーズ / 松村石油:OK-300シリーズ(主に光学精密洗浄用)/ パーカーコーポレーション:PKシリーズ / ケミック:ケミQ A,C,Nシリーズ
準水系洗浄液
<準水系洗浄液の特徴>
主な対象汚れフラックス(35%)
鉱物系加工油(24%)
粉塵・不純物(18%)
特徴溶剤に水などを配合した洗浄液です。水の配合量を工夫して消防法上の規制を回避した洗浄液もあります。
留意点消防法の規制対象外の洗浄液でも水分濃度が低下したときに引火性になるものがあります。その場合は洗浄液の水分濃度管理が必要となります。
洗浄液の中に占める出荷比率3%
主な製品名
荒川化学工業:パインアルファ / 花王:クリンスルーシリーズ / クラレトレーディング:ファイントップ Jシリーズ
炭化水素系洗浄液
<炭化水素系洗浄液の特徴>
主な対象汚れ鉱物系加工油(68%)
グリス・潤滑剤(15%)
防錆油・防錆剤(8%)
特徴石油系の洗浄液です。
脱脂力があり、蒸留再生が可能な洗浄液が市販されているので、幅広い産業分野で使用されています。
留意点この種類の洗浄液は引火性があるので消防法に従い、安全対策に留意する必要があります。
洗浄液の中に占める出荷比率19%
主な製品名
JXエネルギー:ドライソルベントハイソフト / シェルケミカルズジャパン:シェルゾールMC / 昭和電工:ソルファイン / 出光興産:ダフニークリーナーシリーズ / ケミック:ケミQ SXシリーズ / ENEOSサンエナジー:NSクリーン、EMクリーン / ネオス:ソルベント600N、650M / 松村石油:ダストクリーンDCシリーズ(主に光学精密洗浄用) / ユシロ化学工業:ユシロクリーナー O-200、S-100、SL450、SL430 / 東ソー:HCシリーズ HC-250、HC-370、HC-FX50、HC-FX70、HC-PF55E、HC-AD50、HC-WS70
塩素系洗浄液
<塩素系洗浄液の特徴>
主な対象汚れ鉱物系加工油(34%)
グリス・潤滑剤(14%)
油汚れ・シミ(11%)
特徴塩素を含む有機物質の溶剤です。溶解力が高い、引火点が無い、蒸留再生が可能な洗浄液が市販されているなどの理由で幅広く使用されてきました。
留意点有機溶剤中毒予防規則の規制に従った運用が必要となります。
近年、環境保全の観点から法規制が厳しくなっています。このため使用量が減少しています。
例)ジクロロメタン(塩化メチレン)とトリクロロエチレン(トリクレン)の合計使用量:H22年29,397t → H27年には21,499t
洗浄液の中に占める出荷比率31%
主な製品名
トリクロロエチレン(トリクレン) / メチレンクロライド(塩化メチレン、塩メチ) / トリクロロエタン(トリエタン) / テトラクロロエチレン(パークロ、パークレン)
フッ素系洗浄液
<フッ素系洗浄液の特徴>
主な対象汚れ油汚れ・シミ(29%)
フラックス(19%)
粉塵・不純物(13%)
特徴HFE系、HCFC-225系、HCFC-141b系などの種類に分類される。対象となる汚れの傾向がそれぞれ異なっています。
表面張力が小さく浸透性に優れているため精密機器や電気機械部品の分野での使用が多い傾向があります。
留意点炭化水素系や塩素系などの洗浄液と比較すると高価な洗浄液が多いので、使用分野が限定される傾向があります。
洗浄液の中に占める出荷比率3%
主な製品名
三井・ケマーズ フロロプロダクツ:バートレルシリーズ / 日本ゼオン:ゼオローラH、HTA
臭素系洗浄液
<臭素系洗浄液の特徴>
主な対象汚れ鉱物系加工油(70%)
フラックス(21%)
水溶性加工油(9%)
特徴n-プロピルブロマイド(1-プロモプロパン)などの成分を含む洗浄液で塩素系有機溶剤の代替品として市販されています。
留意点リスクアセスメント対象物質への指定や、日本産業衛生学会から許容濃度0.5ppmの勧告がだされるなど環境面の規制動向が注目されています。
洗浄液の中に占める出荷比率1%
主な製品名
三井・ケマーズ フロロプロダクツ:バートレルシリーズ / 日本ゼオン:ゼオローラH、HTA
アルコール系洗浄液
<アルコール系洗浄液の特徴>
主な対象汚れ油汚れ・シミ(42%)
粉塵・不純物(31%)
フラックス(2%)
特徴アルコール系洗浄液で主に使用されているのはIPA(isopropyl alcohol)です。主に精密機械器具や電気機械器具などの分野で使用されています。
洗浄だけではなく乾燥工程にも使用されています。
電子工業用などグレードが高い製品も販売されています。
留意点この種類の洗浄液は引火性があるので消防法に従い、安全対策に留意する必要があります。
有機溶剤中毒予防規則の規制に従った運用が必要となります。
洗浄液の中に占める出荷比率16%
主な製品名イソプロピルアルコール(IPA) / エタノール
クローズアップ洗浄液
ユニークな特徴を持った洗浄液をピックアップしてみました。
洗浄液の全般的な特徴はこのページの上部をご覧ください。
中性系(水系洗浄液)
<中性系(水系洗浄液)の特徴>
主な対象汚れ水溶性加工油(47%)
粉塵・不純物(21%)
鉱物系加工油(16%)
特徴水系洗浄液 の出荷量に占める中性洗浄液の割合は22%と大きくありませんが、電気機械器具や輸送用機械器具、一般機械器具などの分野で使用されています。
アルカリ性に弱いワーク用なのどのユニークな製品も発売されています。
主な製品名第一工業製:ビークリヤCW-6340E(中性)
グリコールエーテル系洗浄液(準水系洗浄液)
<グリコールエーテル系洗浄液(準水系洗浄液)の特徴>
主な対象汚れフラックス(35%)
鉱物系加工油(24%)
粉塵・不純物(19%)
特徴準水系洗浄液 の出荷量に占めるグリコールエーテル系洗浄液の割合は98%と大部分を占めています。電気機械器具が使用分野の66%を占めています。
主な製品名クラレ:DファイントップS310
HFE系洗浄液(フッ素系洗浄液)
<HFE系洗浄液(フッ素系洗浄液)の特徴>
主な対象汚れ粉塵・不純物(69%)
油汚れ・シミ(19%)
フラックス(6%)
特徴フッ素系洗浄液 の出荷量に占めるHFE系洗浄液の割合は13%と大きくありませんが、電気機械器具や精密機械部品、輸送用機械器具などの分野の精密洗浄で使用されています。
主な製品名AGC:アモレア、セントラル硝子 / CELEFIN® 1233Z、ソルベックス / ソルブ55シリーズ、3M / Novec-7100
洗浄液の分類、対象汚れ、使用分野は「平成20年度 化学物質安全確保・国際規制対策推進等(工業用洗浄剤の実態調査)調査報告書」 みずほ情報総研株式会社 平成20年度 経済産業省委託調査報告書から引用しています。
ジクロロメタン(塩化メチレン)とトリクロロエチレン(トリクレン)の合計使用量は「平成28年度 揮発性有機化合物(VOC)排出インベトリ作成等に関する調査業務報告書」株式会社環境計画研究所 平成28年度 環境省受硫黄調査業務報告書のデーターを引用しています。