超音波洗浄機について
超音波洗浄機の役割
ここであらためて、超音波洗浄機の役割を考えてみたいと思います。身近なところで、ご家庭の大掃除をイメージしてみてください。まず最初に、ホコリなどの軽い汚れは「カラ拭き」でも落ちますね。ひどく汚れた網戸などは「水拭き」に切り替え、洗剤もお使いになると思います。一方、油で汚れた換気扇などは洗浄液に「漬け置き」した後シャワーで流すか、ブラシなどでこすり洗いをするかもしれません。
このように、汚れを落とすには・・・
ドライ(カラ拭き) ⇒ ウェット(水拭き)+洗剤
漬け置き ⇒ シャワー ⇒ 物理的刺激(ブラシでこするなど)
というセオリーがあるわけですが、超音波洗浄機は最終段階で使う「ブラシ」にあたります。要は、究極の「物理的刺激」なのです。他の方法では落とせずにお困りの汚れに対し、最終手段のひとつとして「超音波洗浄機」をご検討ください。また、単に洗浄だけでなく、洗浄後の「すすぎ」に超音波洗浄機をお使いになるとリンス効率のアップが期待できます。
超音波洗浄機の構成
超音波洗浄機は、下記の3つの構成要素から成っています。
1)発振器 = 電力を供給するもの = ステレオに例えるとアンプ
2)振動子 = 電気を振動に変換し超音波を発生する = ステレオに例えるとスピーカー
3)媒質 = 超音波を伝播させる水や洗浄剤など
眼鏡店などでよく見かける卓上型の超音波洗浄機は、この3つの構成要素が一体化されたタイプです。
振動子の仕組み
発振器から出る電気信号を振動に変換し、超音波を発生させる超音波振動子は、共振の原理を活用したもので、一般的に90%以上の高い変換効率を実現しています。 振動素子には、電界が加わると伸び縮みする「電歪型(デンワイガタ)」と、磁界が加わると伸び縮みする「磁歪型(ジワイガタ)」があります。現在は電歪型の「BL振動子(ボルト締めランジュバン型振動子)」が主流となっており、最高液温は80℃(沸点近傍は除く)まで使用可能です。
電歪型振動子の材質は、一般に「圧電セラミックス」と呼ばれるものが使われており、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)もそのひとつですが、これらに高い電圧をかけることで、セラミック結晶粒の向きが揃います。
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圧電セラミックスにプラスの電圧を加えると縦方向に伸び、マイナスの電圧を加えると縮む(その分横方向に膨らみます)という性質を利用し、交流信号を与えてこれらを交互に繰り返すことで「振動」を起こしているわけです。つまり振動子の役目は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換しているということになります。
投込振動子や振動板などの超音波振動子の内部には、BL振動子などの「振動素子」が接着されています。前述のとおり、振動素子は超音波発振器が出す高周波電力を機械振動に変換し、強力な音波を発生させます。
BL振動子は、PZTを金属のブロックで挟み、ネジ(ボルト)で締め付けて圧力をかけることで振動性能を向上さたものです。カイジョーの振動子は、部品の精度や組立方法、その形状等に独自ノウハウがあり、高い信頼性を裏付けています。
超音波振動子の形状
振動子には、様々な形状があります。それぞれの特徴や用途に応じてお選びください。
1) 投込振動子
既存の洗浄槽に沈めて使うタイプです。簡単に設置や取外しが可能ですが、洗浄槽は他方式に比べ大きなサイズは必要になります。また、蛇管の取回しには、注意が必要です。
2) 振動板
洗浄槽をなるべく小さくしたい場合は「振動板」がおすすめです。装置に組み込んで使われることも多いですが、パッキンを使用しているため、耐薬品性に注意が必要です。
3) 洗浄槽最も簡単に設置できる振動子が「洗浄槽」です。発振器とつなぐだけで比較的手軽にお使いいただけますが、万が一故障した場合には、洗浄槽ごとの交換が必要となります。
4) スポットシャワー
細いノズルからメガソニック(430 kHz~3 MHzの超音波)が載った洗浄液を噴射させ、 HDDデスク、半導体ウエハやLCDなどを1枚毎に洗浄します。
5) ラインシャワー
幅約1mmのウォーターカーテンにメガソニック(950 kHzの超音波)を載せ、ダメージ発生を抑えた高精密洗浄が可能です。洗浄効率が高い方向へ洗浄液を噴射させれば、FPD基板などの裏面からの洗浄も可能です。
6) ホーンタイプ
ホーンタイプは、液中洗浄から乾式洗浄まで設置場所を選ばずに使用でき、一般の超音波洗浄機で落ちない汚れを落とすことができます。