プラスチック同士を溶着するには、大きく分けて2つの方法があります。
ひとつは接着剤などの「溶剤」を使う方法で、もうひとつが「熱」による方法です。
前者が「化学的」なアプローチであるのに対し、後者は「物理的」なアプローチであると言えます。
さらに、熱溶着は2つに分類されます。
ひとつが「外部から加熱する」方法、そしてもうひとつが「内部から加熱する」方法です。
熱風溶着、電気溶着、赤外線溶着、レーザー溶着など、ほとんどの熱溶着が外部から加熱する方法であるのに対し、超音波溶着、振動溶着、スピン溶着などは、内部からの摩擦発熱を使って溶着する方法です。
超音波溶着のメカニズムは、ごくシンプルなものです。
ホーンの先端からプラスチック溶着物に伝達された超音波振動がプラスチック内部を伝搬することによって、接合面が発熱します。
その熱により接触域のプラスチックのみが溶解し、プラスチック固有の高分子鎖の絡み合い、および一次結合が生ずることにより溶着されます。
つまり、超音波による振動がプラスチックの内部を発熱させ、「軟化溶融現象」が起きてプラスチック同士が接合されるわけです。
これは金属溶着においても同様で、金属内を超音波が伝搬し、超音波振動が接合面にて金属同士が摩擦を起こし、金属表面の酸化皮膜が破壊され、金属同士が混じり合い接合されます。
超音波溶着は、直接溶着や連続シール溶着のように「圧縮振動」によるものと、伝達溶着のように表面における「衝突効果」によるものとに大別されます。
直接溶着とは、超音波を伝えるチップ(工具ホーン)接触面の強い応力場で、プラスチックの粘弾性的性質によって急激に発熱し、溶着する性質を利用したものです。
一方の伝達溶着は硬質プラスチックに限られますが、チップに加える静加圧力を加減して、プラスチック相互の境界面およびチップとプラスチックの接触面に極めて微少なギャップを設け、この状態でチップからプラスチックへハンマー作用で超音波振動を伝えます。
この振動は、チップ側のプラスチックには内部歪みではなく速度として伝わり、受け台側のプラスチックに衝突する状態で発熱することによって溶着されます。
チップ直下にかぎらず、成形品ではかなり離れたところでの溶着も可能で、しかもチップ接触面にはほとんど傷を残さず、不要な部分を加熱することなく成形品のように比較的厚いものの溶着も容易にできます。